師範挨拶 | 空手 坂井道場

空手 坂井道場

師範挨拶

こんにちは。代表を務める坂井と申します。
この度は当道場のホームページをご覧頂き、ありがたうございます。

当道場は、もともと、小学生を対象とした完全非営利の空手教室として、練馬区にある豊玉南小の体育館を拝借し、平成十六年四月に発足致しました。その後、同年十月より、月刊誌への執筆の際に何度かお世話になりました大東塾・不二歌道会さんのご好意により、同会本部が入る渋谷区千駄ヶ谷の財団法人大東会館内の武道場を拝借、社会人・大学生向けの道場として発足させ、現在に至つてをります。豊玉南の空手教室が非営利であることは今も変はりありません。

さて、当道場の特色は、何と申しましても、精神、肉体の両面をバランスよく鍛へるといふことにあります。
このやうに申しますと、どこの道場でも心身の強化と謳つてゐるではないか、とお叱りを受けさうですが、肉体の強化だけでなく精神の涵養に真剣に取り組んでゐるといへる道場は果たしてどれだけあるでせうか? 私は常々疑問に思つてをります。

空手の稽古を通じて精神を鍛へるには、武道、空手が、格闘術であると同時に、伝統文化であるといふことを、まづ、指導者がよく理解してゐる必要があります。武道、そして空手は、単なる格闘術ではなく、「力も入れずして、天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、をとこをむな(男女)のなかをもやはらげ、猛きもののふの心をもなぐさむる」(紀貫之卿)やうな力をも秘めた伝統文化でもあるのです。

伝統文化に接するには様々な方法がありますが、そのうちの一つに、伝統文化の中に自己を投入し、古人の体験したことをそのままに追体験してみるといふ方法があります。この方法が即ち私達の道場でいふところの「稽古」なのです。そしてこの「稽古」によつて、過去から伝はる作法、技術といふ目に見える実体としてのかたちに親しみ、かつそれらに蓄へられてゐるはずの、古人の残した目に見えぬいはば精神のかたちのやうなもの――英知、良識とでもいふべき――を看取せんとする試みこそが、武道における精神を鍛へる唯一の方法であると私達は信じてをります。

話がいささか抽象的になつてしまひましたが、私のいひたいことは実に簡単なことなのです。武道を志す者は、今に伝はる武道の作法、技術の、外見上の動作をまづ無心に学び、さらにそれらの中に蓄へられてゐるはずの先人達の知恵に学ばうと努力しなくてはならない。さうすれば、その努力の過程において、幾分なりとも精神が鍛へられるであらうといつてゐるだけなのです。しかし、この試みが、容易な営みでないことはいふまでもありません。

勿論、当道場は、技術、体力といつた肉体面の強化を怠つてゐるわけではありません。当道場では、上述の「稽古」と肉体面の修練である「練習」をある程度分けて考へ、その上で両者をバランスよく向上させるやう努めてをりますので、大会出場を希望する道場生達にも充分満足して頂いてをります。
心身両面を鍛へたいといふ皆様のご入会を道場生一同心よりお待ちしてをります。

坂井道場代表
坂井勝生